遺言書と生命保険金
遺言書
最近、相続税の増税や「終活」が注目されたことにより、以前よりも遺言書を作成される方が増えているかと思います。遺言書を作成される場合には、後のトラブルを避けるため、多少コストがかかりますが、公証人役場を通じて作成するなど正しい手続をされることをお勧めいたします。(「公正証書遺言」といいます。)
さて、今回は遺言書と生命保険金の関係について、お話させていただきたいと思います。
遺言書と生命保険金
遺言書は相続財産の分け方を被相続人が生前に記したものであり、相続発生後はその遺言書の内容に従って相続財産を分けることになります。(相続人全員の同意があれば、遺言書を破棄して別の分け方をすることもできます。)
遺言書の作成にあたって生命保険金を遺言書に記載する必要があるか否かですが、記載する必要はありません。これは生命保険金を誰が受け取るかは生命保険契約によって決まっているからです。法律(民法)では、生命保険金は契約にて指定されている保険金受取人の固有財産であり、被相続人の相続財産ではないと考えるからです。
しかし、相続税の計算する上では、生命保険金を相続財産とみなして相続税の計算対象に含めます。(「みなし相続財産」といいます。)
民法と相続税法での取り扱いが異なるため、わかりづらいのですが、このような考え方をします。
活用方法
例えば、相続人が子A、子Bの2人の場合で、子Aに多額の財産を相続させたいと考えた場合、遺言書を作成することになると思いますが、ここで「遺留分」というやっかいな問題が生じます。
「遺留分」は各相続人が最低限相続することができる相続財産の割合であり、割合は「法定相続分×1/2」になります。
この場合の子Bの遺留分は「1/2(法定相続分)×1/2=1/4」となり、子Bが相続発生後「遺留分の請求」を行った場合、子Bが1/4の相続財産を相続することになります。
被相続人としては、できるだけ子Aに多くの財産を相続してもらいたければ、財産の一部を生前に子Aを受取人とする生命保険金に変更しておくことをお勧めいたします。
生命保険金は、同じ民法上の制度である「遺留分」でも相続財産とはなりません。よって生命保険金については、遺留分の対象にはならないので全額子Aが受け取ることができます。子Bは生命保険金を除いた残りの財産の1/4を相続することになり、子Aの受け取る財産を多くすることができます。
財産の分け方は、いろいろな法律が絡んでくることにより思った以上に複雑です。
専門家のアドバイスを受けながら対応されることが望ましいと思います。